治療が必要な人が治療されていない・・・治療が必要な人の50%しか治療していない
どのくらい血圧が高ければ「高血圧症」と診断されて治療が必要であるかは、血圧の基準をみれば一目でわかります。ところが「高血圧症」の人の半分しか治療を受けていないことが幾つかの報告から明らかになっています。
どうしてでしょうか?
一つは、健康診断(住民健診、職場健診等)の結果に対するケアが不十分であることです。
症状がないから高血圧はたいしたことはない
血圧が上がると頭痛などの症状が出る
”血圧がやや高めですから、要経過観察です”
というコメントです。これは間違いです。だいたい要経過観察ってナンでしょうかね?どうすればいいのか全然わからない言葉なのにとてもよく使われます。これでは治療する機会を無くしてしまいますね!でもこれはまだましな方です。
最悪なのは”血圧は少し高いですがこれくらいならいいでしょう!まぁ塩分を控えめにして下さいね”というコメントです。
こう言われたのでは、自分が治療が必要な高血圧症であることにさえ気がつかずに終わってしまいます。医療機関を受診してさえこう言われることがあるようです。20年前は高血圧は160/90mmHg以上だと言われた時期がありました。こういう指導をするのは血圧に対する知識が20年間進歩していないとしか思えません。

 140/90mmHg以上は治療しなさいと言うのはしっかりした根拠があります。何万例にも及ぶ治療の研究の結果、140/90mmHg以下に血圧をコントロールすれば心血管合併症を防ぐことができるとわかったからです。言い換えれば、140/90mmHg以上の血圧を放置すれば、心筋梗塞や脳卒中になる危険性がしっかり増えると言うことです。
血圧と症状に関する誤解
例えば、あなたの健康診断の結果血圧が、150/90 mmHgであったとします。
ここでガイドラインに従って適切に判断すれば
     「あなたは高血圧で治療が必要ですから、医療機関を受診して下さい」という結論になります。
このような指導を受ければ問題ないのですが、よく見受けられる指導は
医療機関で充分な治療を受けていない・・・目標血圧まで降圧されている人は50%
学会での報告や調査結果から、ガイドラインで定めた降圧目標まできちんとコントロールされているのは治療を受けている人の50%程度だと言われています。例えば糖尿病がある場合、血圧は130/80mmHg未満にコントロールするように勧告されていますがなかなか守られていないようです。
 これには医師、患者双方に理由がありそうです。医師の問題としては、ある程度血圧を下げて医師が満足(妥協)してしまう問題。患者側では降圧のために薬を増やすのを嫌う問題です。
 実際のところ、目標血圧を達成するには、お薬は一つでは不十分の場合が多く、たいていは2〜3の薬の併用が必要です。ところが患者さんの方で、薬を増やすのを嫌がって、薬の追加ができない場合がかなり見受けられます。
治療が不充分であるのに、よい治療がされていると誤解されている場合
血圧のお薬を服用していて、病院で血圧を測ると120/80mmHgと良い数字なので安心していたが、実は早朝には150/90mmHgと血圧が高かった・・・・というケース。 これを
仮面高血圧(仮面早朝高血圧)と呼びます。
例えば、朝8時に血圧の薬を服用して病院へ行き11時に血圧測定をおこなうと、一番薬が効いている時間なので良い数字がでる。ところが薬の持続時間が18時間ほどしかなく、朝起床時から薬を飲んで1時間ほど・・9時頃までは薬の効果が消えていて高血圧になっている場合があります。このような早朝の高血圧は大変危険であることがわかっています。しかし普通に病院で血圧を測っていてもこの仮面高血圧に気がつきません。この状態を見つけるためには、
家庭血圧の測定・・・家で自分で血圧を測定すること!
家で血圧を測定することはとても大切です。家庭血圧を測定しなければ「仮面高血圧」は決して見いだされません。当院では可能な限り全員に家庭血圧を勧めています。外来で月に1〜2回測定する血圧はもちろん重要ですが、毎日の血圧はさらに重要で役に立つ情報です。高血圧の人は必ず家庭血圧を測定しましょう!
 一旦「仮面高血圧」であることがわかれば、薬の種類を変えたり、服用時間を工夫するなどして、この状態は解消可能です。
家庭血圧を測定すると「仮面高血圧」とは逆の「白衣高血圧」であることに気がつくこともあります。「白衣高血圧」とは家では血圧が正常なのに、病院で医療関係者の前に行った時だけ血圧が上がるタイプです。この場合は治療が必要かどうかまだ結論は出ていません。しかし「白衣高血圧」に気がつかなくて、過剰なお薬を服用する危険はあり得ますから、やはり家庭血圧は重要です。
これはどちらも誤解・デマです。
一般に高血圧症は殆ど症状がありません。まして10〜20mmHg程度血圧が上昇してもそれを感じるほどヒトの体は敏感ではありません。血圧は24時間変動していて、正常血圧のヒトでも一日に30mmHg程度は上下します。そのたびに症状が出没することはありません。
むしろ逆に頭痛など症状があると、その症状が血圧を上げることはよくあります。
何となく頭が痛くて血圧を測ったら高かった・・・・・・だから、血圧が上がって頭が痛くなった・・・と思いがちですが多くの場合逆です。頭痛が血圧上昇を引き起こしていることが多いのです。
高血圧治療の問題点と誤解